玄米食がよい理由

人間に必要な40種類以上の栄養素の
ほとんどを含む玄米は、まさに栄養の宝庫

玄米は稲からもみ殻を取り除き、胚芽や表皮が残っている状態の米です。

玄米は、ビタミン、ミネラル、食物繊維だけでなく、その他機能性成分を含んでいます。小麦粉やトウモロコシ、イモ類(ジャガイモ・タロイモ等)などの世界の主食と比較しても栄養価に大変優れ、アレルギーも少ないことから世界中で注目されています。

玄米の特徴

胚 芽
種が芽を出す部分。玄米に含まれるタンパク質、ミネラルやビタミンがこの胚芽に集中して存在しています。
表 皮
ビタミン、ミネラルなどのほか、食物繊維、フィチン酸が多く含まれています。
胚 乳
白米の部分。でんぷん質(糖質)が中心で体のエネルギー源となります。

玄米に豊富に含まれる主な成分

玄米に豊富に含まれる主な成分

栄養素

食物繊維
消化管機能や腸の運動を促進する、栄養素の吸収を緩やかにするなどの生理作用があります。

食物繊維

ビタミンB1
糖質代謝と分岐鎖アミノ酸代謝に関与しています。
ナイアシン
アミノ酸、脂質、糖質代謝に関与しています。また、酸化還元反応を調整する働きをします。
ビタミンB6
アミノ酸代謝、核酸代謝に関与しています。免疫系の維持にも重要な栄養素です。

ビタミンB6

パントテン酸
糖代謝、脂質代謝に関与しています。
マグネシウム
骨や歯の形成に必要な栄養素です。エネルギー産生や代謝に関わる酵素の活性化、筋収縮、神経の興奮にも関与しています。
エネルギー産生や鉄代謝、骨の形成、活性酸素の除去に関与しています。
マンガン
骨の形成、糖質や脂質の代謝、皮膚の代謝などに関与しています。

機能性成分

フェルラ酸
抗酸化作用があります。美白効果が期待されています。
フィチン酸
抗酸化作用があります。酸化ストレスから体を守る働きが期待されています。

フィチン酸

イノシトール
肝臓への脂肪蓄積の予防効果や、コレステロール血症の改善効果が期待されています。
アラビノキシラン
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化する働きがあります。
γ-オリザノール
抗酸化作用があります。脂質異常症の治療薬として用いられています。

γ-オリザノール

植物ステロール
食事に含まれるコレステロールの吸収を抑え、血中コレステロールを下げる効果が期待されています。
γ-アミノ酪酸(GABA)
精神安定効果や、血圧降下作用が期待されています。

現代人に足りない栄養素を補う玄米

玄米にはどのくらいの栄養素が含まれているのか、白米と比較したのが下のグラフです。精白米を1としたときの玄米の栄養素を示したもので、マグネシウムは7倍、鉄は6倍、ビタミンB1は8倍、ナイアシンは14.5倍、ビタミンB6は10.5倍も含まれています。これらは全て主に表皮や胚芽に含まれています。平成30年度の国民健康・栄養調査で30代女性はビタミンB1、B6、マグネシウムなど、玄米に多く含まれる栄養素が不足しがちなことがわかっています。白米食を玄米食に変えることでこれら栄養素を多く摂取することができます。

白米と比較した玄米の栄養素

玄米食のエビデンス

近年では、玄米食を取り入れた食生活の健康に対するメリットが報告されています。

玄米食

01
玄米食はメタボを改善する

メタボリック症候群である27人の被験者に白米食もしくは玄米食を8週間ずつ食べてもらい、その時のメタボ、血糖値や血圧に関するデータを比較しました。玄米食を食べたときは、体重、腹囲、内臓脂肪面積、収縮期血圧(上の血圧)が有意に減少することがわかりました。それに伴い、血圧や心臓疾患に影響を与える血管内皮の機能も改善することが示されました。ところが白米食に戻すと、元に戻ってしまうという結果となりました。玄米食は毎日食べ続けないと、効果が出ないことを示唆しています。

Br. J. Nutr., 111, 310-320(2014). doi: 10.1017/S0007114513002432

玄米食はメタボを改善する

02
玄米食が糖尿病を予防する

世界第2位の2型糖尿病大国であるインドでのヒト介入試験で、BMI 23以上のヒトを対象に白米食と玄米食を6週間ずつ食べてもらい、その時の2型糖尿病のリスクを調べました。玄米食を食べた期間では、空腹時血糖値、インスリン量、HbA1c、HOMA-IR、中性脂肪、総コレステロール値、LDL-コレステロールの値が低くなる傾向が見られ、炎症の度合いを示す高感度CRPが有意に低くなっていました。特にメタボと診断されていたヒトは、玄米食を食べた期間のHbA1cが有意に低くなり、総コレステロール値、LDL-コレステロールも低くなる傾向がありました。「BMI25以上のヒトに対して、玄米食は有益である」としています。

Br. J. Nutr., 121, 1389-1397(2019). doi: 10.1017/S000711451900076X

玄米食が糖尿病を予防する

03
玄米成分が脳で働き、高脂肪食の嗜好性を和らげる

01と同じ文献で、玄米食で体重が減るメカニズムについて、3つの仮説を立てています。1つ目は食後の血糖値とインスリン量が低くなっていること、2つ目は玄米食の後の空腹感・満腹感の感じ方の変化が自然とエネルギー摂取量を控えさせたこと、3つ目は微量栄養素が食行動やインスリン感受性に影響を与えている可能性があることを挙げています。マウスを使った実験では、玄米に含まれるγ-オリザノールが脳で働き、高脂肪食への嗜好性が和らぐことがわかりました。

Diabetes., 61, 3084–3093(2012). doi: 10.2337/db11-1767

Br. J. Nutr., 111, 310-320(2014). doi: 10.1017/S0007114513002432

体重が減るメカニズム

玄米に関するQ&A

Q
玄米の皮に農薬がついている場合、かえって体に悪いのでは?
A
稲の籾殻だけを除き、果皮もそのままいただく玄米。その分、農薬の影響を懸念する人も多いでしょう。厚生労働省では人が摂取しても安全と評価した量の範囲で残留農薬の基準を決めており検査をしています。玄米や米糠に付着している農薬は最新の機械を用いてもほとんどは検出限界以下です。毎食食べる程度では残留農薬による影響はありませんし、それよりも玄米を食べる健康へのメリットの方が圧倒的にあります。どうしても気になる方は有機栽培した低農薬の物を選びましょう。
Q
玄米が合わない人はいますか?
A
胃腸が弱い方、咀嚼力、消化力が低下した高齢者は玄米の食物繊維が胃腸にとって負担になるため、玄米粥や少し精白したごはん(五分づき玄米など)にされた方がよいでしょう。玄米を使った加工品(玄米もち、玄米粉など)を補うのも良いです。
Q
玄米のアブシジン酸は、生命体にとって毒になると聞きましたが・・・
A
アブシジン酸が健康被害を及ぼすという医学的な報告はありませんので、心配する必要はないと考えられます。
琉球大学医学部第二内科、益崎教授の見解が参考になります。(雑誌『むすび』2018年10月号より)
アブシジン酸は、基本的に植物が乾燥から身をまもるための物質で、どんな植物にも含まれていますが、アブシジン酸の摂取が健康被害を及ぼすという医学的な報告はありません。
非常に高濃度なアブシジン酸を培養細胞に添加すると細胞内のミトコンドリアという器官に機能障害が起きたという実験報告がありますが、日常の食生活でそのような濃度を摂取することはありませんので安心してください。
Q
玄米のフィチン酸がミネラルの吸収を阻害するって本当?
A
フィチン酸が鉄や亜鉛などのミネラルの吸収を阻害する、体内のミネラルを排出するという風評が、確たる科学的根拠(エビデンス)のないままに取りざたされていました。しかしその後、世界中の多くのグループでフィチン酸についての研究がなされていますが、現時点で上記のような害は報告されていません。