発酵食品のすすめ

発酵食品には、麹菌を利用した日本酒・味噌・醤油・みりん、酵母を主に利用したパンやアルコール飲料、乳酸菌を主に利用した漬物・チーズ・ヨーグルト、酢酸菌を利用した酢、納豆菌を利用した納豆があります。紅茶・魚醤のように、微生物が関与しない発酵食品もあります。
発酵することによって、もとの素材より保存性がよくなる、栄養価が高くなる、うま味が増えるなどの利点があります。

発酵食品に欠かせない麹(こうじ)とは?

私たち日本人にいちばん身近なものが、コウジカビ(麹菌)を使った発酵食品です。
麹菌を蒸した米・麦・大豆などの穀物に繁殖させると、麹(こうじ)ができます。
この麹を使って、普段私たちが何気なく使っている味噌・醤油・酒・酢・みりんなどの調味料が作られています。

麹菌でつくられる身近な発酵食品

【味噌】
味噌
【醤油】
醬油
【清酒】
清酒
【鰹節】
鰹節

穀物に麹菌を生やすことを「製麹」と言います。米から作られる麹は「米麹」、麦から作られる麹は「麦麹」、大豆から作られる麹は「豆麹」、麦と大豆を混ぜて製麹した麹を「醤油麹」と呼びます。種々の麹を用いることで、様々な味や風味の発酵食品がつくられます。

麹の発酵食品が健康に良いのはなぜ?

麹菌は素材の食味を良くするだけでなく、発酵中に様々な成分を生み出します。近年では、その成分に健康に有益な効果があることもわかってきました。麹菌が生み出す代表的な成分とその効果を紹介します。

麹菌が生み出す成分

● 麹菌が生み出す成分とその効果

効果

1. コウジ酸
メラニン色素の合成を抑える作用があり、美白効果が期待されています。
2. GABA(ギャバ)
精神安定効果や、血圧降下作用が期待されています。
3. エルゴチオネイン
強い抗酸化作用があります。神経系疾患の予防効果が期待されています。

エルゴチオネイン

4. ビタミンB群
B2
エネルギー代謝に関与しています。
B6
アミノ酸代謝、核酸代謝に関与しています。免疫系の維持にも重要な栄養素です。
葉酸
アミノ酸代謝、核酸代謝に関与しています。細胞の増殖に大切な栄養素です。造血にも関与しています。
ビオチン
脂肪酸代謝、糖新生(糖質以外の物質からグルコースを生産する手段)に関与しています。アレルギー症状を緩和する作用があります。

● 麹が作る酵素とその効果

麹菌は発酵する過程で、デンプン質を分解する酵素、たんぱく質を分解する酵素など多種多様な酵素をつくり、菌体外に分泌することが知られています。酵素は発酵食品を作るうえで重要な働きをします。また、酵素は食材の栄養素を分解し、体内に吸収しやすい形に変えてくれます。さらに、食べたものの消化を助け、胃もたれや胸やけを防ぐ効果も期待できます。その他にも、酵素によって新たな成分が作られます。

麹が作る酵素とその効果

麹菌がつくる主な酵素

・アミラーゼ
デンプンを糖に分解
・プロテアーゼ
たんぱく質をアミノ酸に分解
・リパーゼ
中性脂肪を脂肪酸に分解

酵素の効果

酵素の効果

麹の酵素で健康成分フェルラ酸が増加
玄米の機能性成分であるフェルラ酸はそのほとんどが細胞壁に結合しているため吸収性に乏しいです。麹によって分泌されたセルラーゼ、エステラーゼは結合しているフェルラ酸を切り出す働きがあります。このため、玄米や米糠を麹菌で発酵させると吸収性のよい遊離型のフェルラ酸が増加します。
麹の酵素がオリゴ糖を増やす
麹の酵素を蒸米に作用させると、蒸米の中のデンプンが分解され、種々のオリゴ糖が作られます。さらに、ビフィズス菌を増加させるイソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース)が作られます。このため、米と麹を用いた甘酒からオリゴ糖を摂取することができます。

遊離アミノ酸が増える

遊離アミノ酸が増える
鶏肉などの食材を麹に漬け込むと、食材のタンパク質が分解されて遊離アミノ酸が増加します。このため、肉は柔らかくなり、旨味も増します。

酵素のチカラを目で見る実験

身近な麹発酵食品にも酵素は含まれています。味噌を使って酵素の働きを見てみましょう。

実験
① 片栗粉を熱いお湯で溶いて、硬めの「くず湯」を作ります。
※片栗粉はご飯と同じデンプン質(糖質)です。
実験
② くず湯に味噌を入れてかき混ぜます。
実験
③ 3分くらい放置して、再度軽くかき混ぜます。

ドロッとしたくず湯があっという間にサラサラに!!

解説

味噌は、麹に茹でた大豆と塩を加えて混ぜ、発酵・熟成させたものです。
味噌には麹がつくった、デンプン質を分解する酵素、たんぱく質を分解する酵素など多種多様な酵素が含まれます。味噌を入れたくず湯は、酵素によってデンプン質が分解されて水のようにさらさら状態になります。
酵素は食材の栄養素を分解し、体内に吸収しやすい形に変えてくれます。さらに、食べたものの消化を助け、胃もたれや胸やけを防ぐ効果も期待できます。

麹菌の作る酵素が分解を助けてくれます

酵素の弱点
麹菌に含まれる酵素は50℃を超えると働かなくなりはじめ、70℃以上で失活してしまいます。
「麹」マメ知識 ~麹菌は日本の国菌~
麹菌は味噌や醤油、酒、漬物などの日本の伝統食品の発酵・醸造になくてはならないものです。
麹菌(アスペルギルス・オリゼー)は古来日本の豊かな食文化に貢献してきたことが評価され、2006年10月12日に日本醸造学会により「国菌」に認定されました。
日本醸造学会の発表論文には「今後ますます産業的に重要な菌として医薬品をはじめ、広い分野で有用物質の産生に用いられるであろう。」と書かれているほど、麹菌は日本の貴重な財産として注目されています。
Q
麹菌にはどんな種類があるの?
A
醸造や食品に汎用されているコウジカビをご紹介いたします。
  • アスペルギルス・オリゼー Aspergillus oryzae(黄麹菌)…日本酒・甘酒・味噌・醤油・漬物など
  • アスペルギルス・ルチエンシス Aspergillus luchuensis(黒麹菌)…泡盛・焼酎・もろみ酢など
  • アスペルギルス・カワチ Aspergillus luchuensis mut. kawachii(白麹菌)…焼酎・もろみ酢など