お悩み・目的別 食事法

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潰瘍性大腸炎

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監修

医学博士 根本英幸
管理栄養士 石井尚美

大腸の粘膜にびらん(浅くただれている状態)や潰瘍(比較的深くえぐれた状態)ができる大腸の慢性の炎症性疾患で、法律に規定された指定難病の一つです。
下痢とよくおこる腹痛が特徴的で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返します。
原因はまだよくわかっていませんが、内科的治療で多くの人が症状が良くなっている時期(緩解期)を維持することができるようになっています。
食生活に気を付けることで、炎症を予防していきましょう。

おすすめの栄養成分と食品


1.乳酸菌やビフィズス菌を含む食品、腸内の善玉菌を増やすオリゴ糖を取りましょう。

2.野菜(煮たもの)、海藻、きのこ類などから、食物繊維を適度に摂ります。
食物繊維の多くは腸内細菌によって短鎖脂肪酸になり、大腸粘膜の修復を促すと考えられています。
ただし取り過ぎないように注意しましょう。

*不安な場合は主治医の医師に相談しましょう

3.主食は、胚芽米、分づき米にしましょう。玄米食は避けたほうがよいです。
ただし玄米粥や、繊維が微粉末となっている玄米粉、玄米発酵食は適量なら問題ありません。


4.抗酸化物質を含む食品を取ります。酸化を防ぐ作用を持つ物質は、炎症も抑えることが期待されています。
●野菜、海藻類、大豆、玄米発酵食品など

5.IPA(EPA)とDHAは炎症を抑える作用があるので、適度に取りましょう。
●青背魚(さば、いわし、さんま)

6.α-リノレン酸を含む油も、炎症を抑える作用があるので、適度にとりましょう。
●しそ油、えごま油、亜麻仁油
*オリーブ油に多く含まれるオレイン酸は、炎症を悪化させる作用はないと考えられています。特に制限する必要はありません。

7.下血がある場合は、鉄欠乏性貧血になることが多いので、鉄分を含む食品を取ります。
●大豆、納豆、小松菜、ほうれん草、春菊、高野豆腐、いんげんまめ、かき、しじみ

8.治療薬としてステロイドを使っている場合、骨のカルシウムを減少させて骨を弱くする作用があります。
骨を強くするためにカルシウムを十分に取ることが大切です。

●魚介類、大豆、大豆製品、えんどう豆、生揚げ、ごま、菜の花、モロヘイヤ、干しえび、海藻

9.消化酵素を含む食品は、消化を促し胃腸の負担を減らします。
●山芋(生)、大根(生)、麹菌で発酵させた食品(生味噌、玄米発酵食品など)

10.副食は「ま・ご・わ・や・さ・し・い・こ」を上手にとりいれましょう。
●まめ、ごま<種実類>、わかめ<海藻>、やさい、さかな<魚介類>、しいたけ<きのこ>、いも類、はっこう食品
※ただし食物繊維は取り過ぎないように注意しましょう。

控えめにしたい食品


1. 飽和脂肪酸を多く含む豚肉や牛肉、またn-6系の脂肪酸を多く含む植物油は控えます。
体の中でアラキドン酸やリノール酸が酸化されて、炎症を引き起こす物質(過酸化脂質)になることがあります。
●紅花油、綿実油、大豆油、コーン油、ひまわり油

2. 英国の191人の患者さんを追跡した調査では、肉、特に豚肉や牛肉、サラミやソーセージなどの加工肉を多く食べる人は5.2倍、卵を多く食べる人は2.3倍、再燃しやすいと報告されました。
肉類より魚を選びましょう。
●サラミやソーセージなどの加工肉、卵

3.一般食(脂質目標摂取量:20~30%/日総エネルギー※)よりも、脂質を控えめにしましょう。
ファストフードや油で揚げたスナック類、肉や加工食品を食べていると脂質エネルギー比率はさらに高くなるので注意します。
●ファストフードや油で揚げたスナック類、肉や加工食品

3. 食品添加物であるカラギナン(増粘多糖類)が潰瘍性大腸炎の発症に関係している可能性を指摘する研究者がいます。カラギナンの入っている食材は控えめにしましょう。
●ゼリー、氷菓子、缶コーヒー、ハム、ソーセージなど

5.香辛料(唐辛子、胡椒など)、アルコール、冷たい飲食物、炭酸飲料、コーヒーは避けましょう。
アルコールを多く飲む人は2.7倍再発しやすいという報告もあります。
●香辛料(唐辛子、胡椒など)、アルコール、冷たい飲食物、炭酸飲料、コーヒー

7.食物繊維は、取り過ぎにならないよう気を付けましょう。

*参考書籍 『潰瘍性大腸炎と上手に付き合う本―病気を理解して上手に付き合えば大丈夫』
著者 石川秀樹(京都府立医科大学 特任教授)

食事と生活習慣のポイント


1.下痢のために脱水を起こすことがありますので、上手に水分を取りましょう。

  • 胃が急に膨らむと反射が起こり、腸が動いて下痢になるので、水分は何回にも分けてゆっくりと飲みましょう。
  • 吸収の良い水分を取りましょう。
  • 冷たいものは避け、少し温かくしたお茶などが良いでしょう。
  • 炭酸、糖分、甘味料の入ったものは避けましょう。
  • 体調の悪いときは、スープやお粥など水分の多い食事にすると、食事から水分が取れるのでおすすめです。
  • スポーツドリンクは吸収が良いですが、糖分が多く入っているのであまり飲みすぎないように注意してください。

2.楽しい雰囲気で食事をしましょう。
日本の100人の患者さんに調査を行なった結果、食事が楽しいかどうかを聞いたところ「楽しい」と答えた人に対して「楽しくない」と答えた人は2.3倍も悪化していました。また、1人で食べることの多い人が悪化する傾向がありました。

3.決まった時間に朝食、昼食、夕食をとり、間食を控え、1日のリズムを整えます。
朝食を抜く人は男性で2.6倍、女性で2.4倍悪化するという報告があります。

4. 十分な睡眠を取りましょう。日本の100人の患者さんに調査を行なった結果、睡眠時間が7時間以上の患者さんは、7時間未満の人より悪化する率が1/3でした。

5. ストレスのかからない生活を心がけましょう。

<身体的ストレス>
寝不足にならないよう、しっかり睡眠時間をとりましょう。
日焼けもストレスになりますので、強い日差しは避けましょう。
お腹を冷やさないように気をつけ、お腹を強く締め付ける服も避けましょう。

<精神的ストレス>
人間関係のトラブルは、精神的ストレスになります。自分なりのストレス発散法をみつけましょう。
病気のことで不安や心配があるときは、遠慮なく主治医や周りの人に相談しましょう。

6.季節の変わり目に注意
季節の変わり目にも注意が必要です。最も多いのは秋で、その次が春です。
特に1日の気温の変化が激しいときに悪化する人が多いです。
人によって季節が決まっていることが多いので、その季節は特に注意することも大切です。

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