お悩み・目的別 食事法

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腎臓のトラブル(腎炎、腎不全など)

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監修

医学博士 根本英幸
管理栄養士 石井尚美

 腎臓には、毛細血管が糸くず状にかたまった糸球体という組織があり、血液の老廃物をろ過して取り除きます。腎臓の働きが低下した疾病には、腎炎、腎盂炎(じんうえん)、ネフローゼ症候群、腎不全、尿毒症などがあります。(各疾病の解説をページ下方に記載しています)食事をコントロールして、腎臓のトラブルを防ぎましょう。

*医師からナトリウム(塩分)、たんぱく質、カリウム、水分、エネルギーの制限を受けている場合は、その範囲内になるよう調整をしましょう。

おすすめの栄養成分と食品



1. 主食は未精白穀物にします。
未精製穀物は、ビタミンB群・セレン・亜鉛といった腎臓の働きに関わる微量栄養素を多く含みます。

●玄米や分づき米、玄米発酵食品、全粒粉で作ったパンや麺類、そば

2.善玉菌を増やす、食物繊維を取ります。
●野菜、海藻、大豆、玄米
*カリウム制限がある方は、医療機関の指示に従ってください。

3.IPA(EPA)、DHAは炎症を抑え、腎臓を保護する作用と血流を良くする作用があります。
●青背魚(さば、いわし、さんま)、魚油

4.塩分を控え、酸味(レモンや酢)、生姜などの香味野菜、低刺激性の香辛料を活用し、塩分が少なくても満足できる味になるよう工夫します。

5.カルシウムを充分に取ります。腎臓機能が低下すると、カルシウムの吸収に関わる活性型ビタミンD3が作られないので、骨粗鬆症になりやすくなります。
●魚介類、野菜類、菜の花、モロヘイヤ、小松菜、葉大根、豆類、えんどう豆、生揚げ、がんもどき、木綿豆腐など

6.マグネシウムはカルシウムを調節するので、マグネシウムの多い食品を取ります。
●ひじき、大豆、玄米、玄米発酵食品

7.副食は「ま・ご・わ・や・さ・し・い・こ」を上手にとりいれましょう。
●まめ、(種実類)、わかめ(海藻)、やさい、さかな(魚介類)、しいたけ(きのこ)、いも類、はっこう食品
*カリウム制限がある方は、医療機関の指示に従ってください。

控えめにしたい食品


  1. カリウム制限がある場合、野菜はゆでこぼし、
    カリウムを減らすなど調理上の注意を必要とします。
    摂取量については医療機関の指示に従ってください.

  2. 塩分・水分の制限があれば調節をし、むくみを防ぎます。
     摂取量については、医療機関の指示に従ってください。

  3. たんぱく質は多くならないようにします。
     医療機関から制限の指示が出ている場合は従ってください。
     たんぱく質が体内で分解した時に出る窒素化合物が多くなると、腎臓に負担がかかります。
     動物性たんぱく質を控え、大豆等の植物性食品で取るようにします。

  4. 刺激の強い香辛料(唐辛子、胡椒など)、アルコール飲料は避けます。

  5. 白砂糖やそれを含む菓子類、ジュース類は避けます。

  6. リンの多い食品は控えます。
    (加工食品、チーズ・卵など動物性食品、ジュース類)

腎臓に起こる疾患



腎臓に起こる疾患には、様々な種類があります。主な疾患について、簡単に解説します。

1.腎炎
腎臓には、毛細血管が糸くず状にかたまった糸球体という組織があり、血液を濾過して尿を作っていますが、この糸球体に症状が起こるのが腎炎です。

2.急性腎炎
溶連菌などの感染によって抗体が作られ、細菌と抗体が結合したものが腎臓に入り、糸球体が障害を起こします。
子どもに多く発症しますが、1割くらいは慢性に移行します。
食事や水分の制限が必要です。
(病状によっては塩分、たんぱく質、カリウムの制限があります)

3.慢性腎炎
急性腎炎が治りきらずに移行するケースも多少ありますが、9割は原因不明です。
自覚症状が少なくて放置すると腎不全になります。
(腎機能が正常であれば食事の極端な制限はありませんが、塩分は控えます)

4.腎盂腎炎(じんうじんえん)
多くは膀胱炎から移行します。
症状は、寒気、高熱、むかつき、嘔吐、全身倦怠感、腎臓のあたりの痛み、腰痛で頻尿や残尿感、排尿時の痛みといった膀胱炎の症状を伴うことがあります。
利尿作用のあるカリウムを取り、水分も取るようにします。

5.ネフローゼ症候群
疾患を指すのではなく、原因疾患が何であれ、高度のたんぱく質尿と低たんぱく質血症、脂質代謝異常症、浮腫ふしゅ(むくみ)などを呈する症候群をいいます。
原因は腎炎がほとんどですが、糖尿病や全身性エリテマトーデスなどといった他の病気の合併症として起こる場合もあります。

6.腎不全
糸球体の硬化と間質の繊維化が進行して腎機能が低下した状態で、尿の出が悪くなります。
腎不全は急性(大出血ややけど、ひどい下痢や嘔吐により体液や電解質が大量に失われます)と慢性(長期にわたって徐々に腎臓の働きが低下し、初期は自覚症状が乏しく、進行すると尿毒症になります)があります。

7.尿毒症
腎臓の働きが極端に落ちたために、尿の中に排泄されるべき老廃物が身体の中に貯まってしまう状態で、むくみ、嘔吐、倦怠感、食欲不振、頭痛、呼吸困難、貧血、かゆみなどの症状が現れます。
食事制限が必要で、食物繊維とIPA(EPA)は大切です。善玉腸内細菌が増えることにより、アンモニアの生成を抑えます(血中尿素の減少にも良いです)。
但し、カリウム制限がある場合が多いので野菜は茹でこぼして使うと良いでしょう。

8.糖尿病性腎症
糖尿病により血糖値が高い状態が長く続くことで、全身の動脈硬化が進行し、腎臓の糸球体が詰まったり、老廃物をろ過することが出来なくなることで起こります。




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