お悩み・目的別 食事法

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花粉症

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監修

医学博士 根本英幸
管理栄養士 石井尚美


花粉症はスギやヒノキなどの花粉によって起こるアレルギー症状です。くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状があります。人間の体は異物に対して免疫反応を示しますが、花粉を異物として認識して、過剰に反応することで症状が出ます。免疫の司令塔である”T細胞”が暴走すると、反応しなくてもよい刺激にまで、過敏に反応してしまいます。食事に気を付けることで、免疫反応を正常に整えましょう。

おすすめの栄養成分と食品


1.主食は、抗酸化物質の多い未精白穀物にします。
体内の抗酸化物質が減少すると、免疫のバランスが崩れます。
●玄米や分づき米、玄米発酵食品、全粒粉で作ったパンや麺類、そば

*胃腸が弱っている場合は、玄米食でなく、胚芽米、分づき米を使いましょう。ただし玄米粥や、繊維が微粉末となっている玄米粉・玄米発酵食品は適量であれば問題ありません。


2.腸内環境を整える食物繊維、オリゴ糖が豊富な食品を取ります。
腸内のビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌が増えると、免疫を整え症状の緩和につながります。
●大豆、野菜、玄米、玄米発酵食品


3.ビタミンB6は、免疫機能を調節し、抗アレルギー作用があります。
ビタミンB6以外のB群を同時に取ると相乗効果が期待できます。
●大豆、玄米、玄米発酵食品


4.副食にも、抗酸化力の高い食品を取ります。
●野菜、海藻類、大豆など


5.ビタミンAは、粘膜を丈夫にして花粉の侵入を防ぎます。
●にんじん、小松菜、春菊


6.ビタミンCは、炎症にかかわるヒスタミンをブロックします。
●小松菜、カリフラワー、ブロッコリー、ピーマン、レンコン


7.n-3系油脂(α-リノレン酸、IPA(EPA)、DHA)は炎症を抑えるので適量を取ります。
これらの油脂は酸化しやすいので、加熱しないで取る方が好ましいです。
●青背魚(さば、いわし、さんま)、魚油、しそ油、えごま油、亜麻仁油)


8.カルシウムが不足すると、免疫細胞間の情報伝達がうまくできなくなります。
ミネラルバランスの良い食品を取りましょう。
●大豆、種実類


9.セレン、亜鉛は、呼吸器粘膜を守る作用があります。
●玄米、玄米発酵食品


10.副食は「ま・ご・わ・や・さ・し・い・こ」を上手にとりいれましょう。
●まめ、ごま(種実類)、わかめ(海藻)、やさい、さかな(魚介類)、しいたけ(きのこ)、いも類、はっこう食品

控えめにしたい食品


1.n-6系の油脂(リノール酸)は炎症を強めるので減らします。紅花油(サフラワー油)、綿実油、大豆油、コーン油、ひまわり油)、これらを使った料理(揚げ物、ドレッシング)など。

2.トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング)も控えます。

3.アルコール、強い香辛料(唐辛子、胡椒など)は、目・鼻・喉の粘膜を刺激するので避けましょう。

4.動物性食品、砂糖、アクの強い食品、冷たいものも、症状を強めますので控えめにしましょう。

食事と生活習慣のポイント



1.睡眠不足にならないよう、注意しましょう。

2.動物性食品は、鮮度の高い食品を選ぶようにします。

3.だしは昆布などを中心にします。

花粉症の詳しいメカニズム



1.花粉が目や鼻から入ってくる。

2.花粉がマクロファージ(白血球の一種)に取り込まれる。

3.マクロファージが、花粉が入ってきたことをT細胞に知らせる。

4.T細胞が花粉を異物(アレルゲン)として認識して、情報をB細胞に知らせる。

5.B細胞がIgEという抗体をつくる。

6.gE抗体が肥満細胞にくっつく。

7.再び花粉が体内に入ると、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にある抗体と花粉が結合する。

8.肥満細胞から炎症物質(ヒスタミンなど)が分泌され、花粉をできる限り体外に放り出そうとする。
→ くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状が起こる。

免疫バランスの崩れと花粉症



免疫の司令塔の役割を担うT細胞には、Th1細胞とTh2細胞の二種類があります。Th2細胞は異物に対してアレルギー反応を起こし、Th1細胞はアレルギーを抑制する働きがあります。

健康な状態ではこの二つのT細胞のバランスが取れた状態になっていますが、花粉症などのアレルギーを起こしやすい人には、Th2細胞が多いことがわかっています。Th2細胞が暴走すると、B細胞に抗体(IgE抗体)を産生するように指示を出します。この抗体が肥満細胞と結合した状態で花粉などの抗原に出会うと、ヒスタミンなどの炎症物質をつくります。このヒスタミンがアレルギー症状を発症させます。

腸は免疫に関わる大切な臓器



外からの異物に立ち向かい、体を守るのが免疫ですが、外からの異物と密接な関係にあるところが「腸」です。腸は口から入った病原菌が体の内部まで入り込みやすいため、外部からの異物に抵抗する免疫細胞が多く、全身の70%以上が集中しています。 腸の免疫力は、腸内菌叢のバランスによって差が出てきます。腸内の善玉菌が優勢な環境であれば、善玉菌が免疫細胞を強くして、外部から侵入する菌に打ち勝ち、防御する力も強まります。逆に、悪玉菌が多い環境だと、侵入者への防御反応が弱まるばかりではなく、免疫細胞が外界の異物に過敏に反応してしまいます。つまり、アレルギーがひどくなるわけです。

大腸と小腸の二つの免疫システム



最近の研究で、免疫は小腸と大腸の二段階で調整されていることがわかってきました。小腸では、乳酸菌やビフィズス菌が直接免疫力をアップするように働きます。免疫を担当する細胞の数は、小腸の方が大腸より圧倒的に多いのですが、大腸内の腸内常在菌も免疫調節に重要な役割を果たしています。

花粉症と腸内細菌の関わり



花粉症が起きているときは、Th2細胞が暴走している状態です。Th2細胞の暴走の原因の一つに動物性タンパク質や脂質などがあります。これらが十分に消化されないまま腸に届くと、腸内の悪玉菌が増殖し、腐敗物質を産生して腸壁を傷つけます。するとそこでTh2細胞が暴走して、花粉症の症状も重くなるというわけです。つまり、腸内の悪玉菌を減らして腐敗物質の産生を抑え、ビフィズス菌などの善玉菌を増やして腸内環境を整えれば、Th2細胞の暴走を抑えて花粉症の症状を抑えられると考えられます。

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